『ディヴァイン八号機「セピア」』 吉仲悟



2012年 10月 12日 10時 20分
SSGU・自衛隊合同研究施設(大阪府 豊中市)
第七実験区画 R17試験場



 ……淡い光が、その空間を満たしていた。無機質な金属の壁が、その光をかすかに反射してきらめいている。
(実験場とか、研究施設とか言うものは、すべてこんなものなのかしらね……)
 強化プラスチック製の透明なシールド越しに広がる光景を見ながら、SSGU戦闘指揮官兼ディヴァインプロジェクト責任者でもある白河友理恵はふとそんなことを考えていた。
「一番から十三番の循環システム、問題無し」
「M-Cの駆動テスト、完了」
「MAS、SAS、AASの各補助電力の接続も終了しました」
 彼女の前でせわしなく行き交う情報。ずらりと並んだ試験用コントロールパネルの前に座ったオペレーター達が、すさまじい速さでコンソールを操作しながら次々と試験前の最終チェックを行って入る。――白河にとっては見慣れた光景。彼女は、このような起動テストに一年に数十回も立ち会ってきている。
  ――だが、この起動テスト、白河には緊張の色が見え隠れしていた。彼女だけではない。このオペレーションルームに集まったすべてのスタッフの顔には、いつにない緊張と不安が現れている。
 それ一体なぜなのだろうか……。
「……あれから、もう3年もたつのね……」
 不意に、白河が独りごちた。その声は、周りの喧騒にかき消され、誰の耳にも届いていなかったが、彼女はそのまま視線を上にあげて試験場内にたたずむ巨大な影を仰ぎ見た。
 ――超高性能陸戦機動兵器『ディヴァイン』。そこには、そう呼ばれる人型の兵器が固定されていた。しかも、最近開発された量産タイプではない。明らかにただの兵器とは一線を画す有機的フォルム。目とおぼしき外部センサーが全く存在しない頭部。背中に折りたたまれたバインダー状の装備……。これらは、かつてのオリジナルタイプディヴァインに共通して見られた特徴である。
「…………」
 その目がない頭部にじっと視線を固定したまま動かない白河。
「……心配ですか?」
 横合いから、遠慮がちなささやき声。思索から引き戻された白河は、ゆっくり視線をディヴァインから引きはがして声の主に向き直った。
「……すいません、考え事、邪魔しちゃいましたか?」
「ううん、いいのよ奈々ちゃん。別に何か考えてたってわけはないから……」
「そうですか……」
 白河に話し掛けた主任オペレーター、城山奈々美は白河の様子を見て、まだ何か言いたそうだったが、白河がまたディヴァインに視線を戻したので、それ以上は何も言わずに作業を再開した。が、それでも何かと気になるらしく、パネルをたたきながらチラチラと白河の方を盗み見ている。
(……だめね……。不安が顔に出てるようじゃ、他のスタッフにも余計な心配をかけてしまうわね……)
 自分の指揮官としての態度に嘆きつつ、でも……と白河は思う。
(それでも、しょうがないじゃない。これを動かすのはあの時以来なのだから……)
「――機体のチェック、ほぼ完了。内部DAM(カラオケじゃないよ)作動開始。機動コード入力」
「入力終了。DAM作動を確認しました。各部エネルギー伝達順調。パイロット、コンタクターともに今のところ異常なし」
 ディヴァインのメイン電源が作動しはじめた。機体の各部からかすかな軋みが聞こえ始め、装甲の下で、ディヴァインの運動性を支える『M・C(人工生体筋肉繊維)』が活動をはじめたことを教えている。
「いよいよね……」
 思わず、また思っていたことが声にでてしまう。今度は、多少大きな声だったせいか、作業中のスタッフの何人かが白川に視線を向けた。
 だが、すぐに自分の作業に追われてモニターに注意を戻していく。テストは、いよいよ最終段階に入ってきているようだ。
(……あの事故から、ここまで修復するのに3年……。長かったわね。でも、これが動けば、状況はこちらにぐっと傾くわ……)
 さまざまな思いと、そして期待をこめて白河はディヴァインを見つめる。彼女の脳裏には、3年前の事件が鮮明に思い出されていた。
 3年前の事件、それは、SSGUという国家組織が滅んだ日であり、そして、新たなSSGUが生まれた日でもあった。しかし、そもそもSSGUとは何なのか。それは、この地球の今の状況を説明しておかなくてはなるまい。
 ――西暦2002年、人類は突如としてなぞの敵の襲撃を受けた。彼らは、高度技術で武装しており、各国の軍を次々に撃破していき、一週間で地球人類の半分は殲滅されてしまっていた。
 そして、残る半分の生存も危ぶまれた時、現れたのがSSGUなる組織だった。この組織は、日本に本拠をおく『摂陵財団』という財団法人を母体とした組織であり、裏では日本政府の援助を受けて極秘裏にとある兵器の開発を行っていたのである。
 その兵器が、高機動陸戦兵器『ディヴァイン』であり、SSGUはディヴァインをもって敵との交戦を開始した。その結果、敵がディヴァインを最優先攻撃目標にしたのかどうかはわからないが、SSGUに群がってくるようになり、日本は激戦区と化した。一応、地球連合人類救済軍(略して地球軍)という世界各国の残存部隊を集めた軍隊も協力したはしたのだが、人類側の主力はあくまでもSSGUと、彼らの技術のフィードバックを受けた自衛隊であった。そして、敵の侵攻から6年が経過し、人類側は何とか敵を世界の1/3に押し込めることに成功した。そのころになると、敵の兵器軍は、俗に『L.E.A.C.(レアック)』と呼ばれるようになる。
 これは、SSGUのお偉方が彼らをそう呼ぶのにならったもので、詳しい由来は知られていない。そのことから、SSGU敵の正体を知っていて隠しているのでは? との憶測も流れたが、今や人類の英雄である彼らを悪く言うものは表立っては存在しなかった。
 ……人類に押され始めた敵は、劣勢と知るや迅速に支配地域を縮小させ、守りに入った。丁度、長い戦いで疲弊しきっていた人類側も敵をこれ以上追撃するのをやめ、ここに第一次生存戦争は終結をむかえる。敵と人類との国境線では、小規模の小競り合いは毎日のように勃発してはいたが、世界は一応の平和を取り戻したのである。
 そうして1年が過ぎたころ、SSGUの内部で大きな事件が起こる。東京のSSGU本部で行っていたディヴァインの起動テスト中に機体が制御不能になって暴走。本部施設を壊滅させてしまったのである。これにより、SSGU首脳陣の大半が死亡。駐留していた自衛隊の師団、SSGU直属の部隊も全滅するという大惨事になってしまった。
 その後、暴走した機体は、急行したディヴァイン部隊の集中攻撃によって大破、沈黙。たまたま本部を離れていた首脳陣の生き残りによってSSGUは組織再編が行われ、現在に至っているのである。
 次に、ディヴァインのことであるが、これは前述の通り大型の陸戦兵器のことである。基本形態は全高15メートルほどの人型だが、一部多脚などのものも存在している。このディヴァインに使われている技術は、敵のオーバーテクノロジーと酷使しており、耐久性の高い金属や生体部品、謎の動力源など地球上のどれよりも技術水準が高い。この性能によって、人類は敵LEACと互角以上に戦う事ができるようになったわけだが、SSGUは、この技術の出所を一切明らかにしてはいない……。
 なお、現在ディヴァインはそのほとんどが簡易型の量産バージョンに切り替わっており、数も全世界で200体以上が稼動している。
 ちなみに、以前はオリジナルディヴァインという強力なものが主力であったのだが、それらは先の大戦で大半が破壊され、また、本部壊滅事件の際に研究資料がほとんど焼失してしまったために現在では生産することは不可能になってしまっている。唯一、現存するのは……
(唯一現存するオリジナルディヴァインは、私の目の前にあるこの八号機だけ……なのよね……)
 周囲に聞こえないようにそっとため息をもらしつつ、白河は心の中でつぶやいた。
 本部に存在していた過去のすべての研究データが失われ、新生SSGUは大幅な戦力ダウンを強いられていた。なんとか、残っていたデータをかき集めて量産型のディヴァインの開発には成功したものの、やはり強力なオリジナルディヴァインの製造は急務と言えた。おりしも、勢力を盛り返した敵LEACの反撃により、人類は各地で押されはじめている。量産型ディヴァインでは、やはり敵の大型上位種に抵抗することは不可能なことであった。
 そこで、SSGUでは、唯一現存しているオリジナルディヴァイン八号機を修復し、戦線に投入すると同時に実践データを手に入れて、自分たちの手でオリジナルディヴァインを開発しようとしたのである。
 しかし、そううまく事は運ばなかった。
 3年前の事故により、八号機はその制御中枢である頭部を損失していた。そのため、起動に必要な八機用のシークレットコードも失われていて、また、本部に残されていたバックアップ用のコードも本部壊滅の際に焼失していたために、まずはその起動信号を解読する必要があった。
 だが、その作業は困難を極めた。旧SSGUの技術陣の技術力は、現SSGUのそれを上回っていたため、失われた技術を再現するのにかなりの時間がかかってしまったのだ。旧SSGUの主要な研究者たちが、本部壊滅時に全滅していたことも作業の遅れに拍車をかけた。
 それでも、2年後には起動コードが解読され、一応起動が行えるようにはなった。そして、幾度となく起動実験が行われ、起動の確立を限りなく100パーセントに近づける作業がその後1年にわたって続けられてきた。
 その、起動実験の最終テスト。八号機に、実際に操縦者とコンタクターを接続して制御するという実験が今行われようとしている。
 オペレーションルームのスタッフ達の緊張の原因が、そこにあった。
 初めての、オリジナルディヴァインと人間との接続。3年前の事故によって過去のデータが一切失われた今では、オリジナルディヴァインの有人起動テストはまったく未知の実験なのだ。
 噂では、オリジナルディヴァインには何らかの意志のようなものが存在し、乗り手を選ぶという。そして、接続を拒否されたパイロットとコンタクターは、精神を破壊されて魂すらも消滅させられてしまうといわれている。
 ――ちなみに、コンタクターというのは、ディヴァインにパイロットとは別に搭乗する者のことで、パイロットとディヴァインの間に介在し、精神的接触を助ける役目を持つ。また、生体コンピューターのような役割もあわせもっており、戦闘中のさまざまなデータ処理を行なうこともできる。コンタクターの補助によって、パイロットにかかる負担は軽くなり、同時に従来のコンピューターでは為し得なかった柔軟な判断なども行えるようになったのである。
 だが、コンタクターの製造技術も旧SSGUの物であるため、現在の量産型ディヴァインには、アンドロイド製造技術の応用によって生み出された人間の脳の機能のみを持つ人工脳である『簡易型コンタクター』が内蔵されたいる。
 今回の実験に使用されるコンタクターも、人型のコンタクターではなく、脳のみの簡易型バージョンが使用されている。研究によれば、オリジナルディヴァインであっても、別に人型で人間と同じ思考や感情を有したコンタクターを使用しなくても支障はないとのことだが……
「――全てのチェック項目オールクリア。八号機、パイロット及びコンタクターとのコンタクト(精神的接触)にはいります」
「パイロット、コンタクターともに異常なし。脈拍、脳波に大きな乱れはありません」
 そして、テストは未知の領域へ突入していく。別室にある実験用の模擬操縦槽を監視するモニターには、複数のコネクターを接続したパイロットスーツを着用したパイロットが映し出されていた。隣のモニターには、簡易型コンタクターの現在の状態を示すデータが刻々と表示されている。その二つのモニターには、今のところ異常は認められなかった。
「――パイロットの精神パターン、第一ステージから第三ステージまで適合完了。コンタクターと八号機の回線を開きます」
「――コンタクター、神経回路にプラス0.12の負荷を確認。修正範囲内なので無視します」
「……うまく行ってよね……」
 祈るような気持ちでモニターを見つめる白河。その思いは他のスタッフも同様なのだろう。息の詰まるような空気が、オペレーションルーム全体を覆い尽くしている。
「コンタクターとディヴァインのコンタクト、第一層まで完了。続いて、パイロットとコンタクターの神経回路を接続します」
「――接続確認。すべて異常なし。誤差、すべて許容範囲内!」
「……白河さん……」
 テストがそこまで進むと、オペレーターの奈々美が白河を仰ぎ見た。テストは、いよいよ最終段階に入っている。この次は、コンタクターの神経回路をディヴァインの深層部分に接続させ、そしてコンタクターを介してその部分をパイロットにつなげるという作業に移ることになる。ここからは、このテストの責任者である白河の命令が必要だった。
「…………」
 オペレーションルーム内の全員の意識が、白河に集中する。
 白河は、一度自分を落ち着けるようにその目を閉じた。
(……いよいよ、なのね)
(……恐い? そうね、恐いわ。だって……)
(でも、このテストの成功こそが、私たち人類の希望なのよ……)
(……ええ、わかってるわ。だから……)
 ――白河の中で、いくつもの思いが錯綜する。そして、数秒後、ゆっくりと目を開いた白河ははっきりとした声で命令を下した。
「……起動テスト、最終段階へ移行! 全回路開放!」
「了解! パイロットおよびコンタクターの全神経回路を開放、ディヴァインとの深層コンタクトに入ります!」
 接続、開始。緊張する一瞬。このテストの中で最も難しい部分。ディヴァインにコンタクトを拒否されれば、なにが起こるかわからないのだ。その結果は、果たして……。
 ビィーッ! ビィーッ!
 突然、耳障りな警報がオペレーションルームに響き渡った。同時に、モニター内のデータに異常が発生したことを示すメッセージが現れる。
「何? 一体どうしたの!?」
「八号機がコンタクトを拒否! 精神防壁を展開して回線を全て遮断しました!」
 慌てて報告してきたオペレーターの個人モニターを覗き込む白河。そのモニターは、異常を示す警告メッセージで埋め尽くされていた。
「神経回路をこちらからもカットしてコンタクターへの影響を遮断して! 同時にパイロットとコンタクターの接続も切断!」
「間に合いません! 八号機からの逆侵入を確認しました!」
「八号機の精神パターン、コンタクターに接触! 切断した回路を自己修復して全面的接触を図ってきます!」
 めまぐるしく変化するモニター。そして、とびかう怒号と悲鳴。真っ赤な警告メッセージで埋め尽くされていくモニター達。
「コンタクターの精神負荷が許容値を突破します! 限界まであと5秒!」
「――コンタクターは破棄します。緊急事態よ。パイロットだけでも防御して! ……接続ケーブル、物理的切断!」
「了解! ケーブルの物理的切断を実行します!」
「同時に、コンタクターに崩壊ドラッグを投与、八号機の侵入を阻止して!」
「はい! ――コンタクター槽にブレインデッドを注入!」
 コンタクター槽とパイロット槽をつなぐケーブルが、爆薬によって緊急切断される。そして、それと同時にコンタクター槽に、コンタクターの事故崩壊を促す薬物が投与される。これにより、コンタクターの神経回路は瞬時にして焼き切れ、それ以上相手の精神パターンが侵入するのを防ぐのだ。本来は、敵の精神攻撃を防御する最終手段として開発されたものだったのだが……。
「コンタクター、全機能崩壊。八号機の侵入も停止……ってそんな!?」
「どうしたの!?」
 コンタクターの機能停止によって、停止したかにみえた八号機の精神攻撃。だが、モニターには、回路をすべて遮断してもなお侵入を続ける八号機の精神パターンの波形が表示されていた。
「八号機の精神パターンがコンタクターの回路を無視してパイロットへの接触を開始しています!」
「そんなばかな! 回路は物理的に切断しているのに、なぜ!?」
「――八号機は、自らの精神攻撃用システムを使用してパイロットへの接触を試みています!」
「くっ! そんなことが……!」
 ディヴァインの精神攻撃用システム。敵LEACに対抗するべく開発されたもので、文字通り相手の精神を破壊して無力化することがその目的だ。LEACは、その攻撃方法に精神攻撃を有するほど精神構造が緻密であり、精神攻撃も通用する。ディヴァインの高度な精神攻撃および防御システムは、敵の精神パターンを攻撃すると同時に、敵の精神攻撃から搭乗者を防御する機能にもなっている。もちろん、精神攻撃には直接の物理的接触は必要なく、精神波の遠隔投射によっておこなわれるのである。
「――パイロット、精神負荷増大! 自動防御パターンも突破されました!」
「限界です! パイロットの精神が焼き切れますっ!!」
「八号機のメイン電源を落として攻撃を止めさせることは!?」
「無理です! 今は自律制御に切り替わってますから、外部からはどうすることも……」
「くっ……。だめか……っ!」
 全ての手段が封じられ、拳を握り締める白河。そして、沈黙のコンマ数秒。
「――パイロット、精神崩壊を確認。肉体も精神の負荷によって破裂しました……」
「…………」
 呆然と立ち尽くす白河。モニター内のパイロットは、その精神に過度の負荷をかけられ、頭部と胴体をまるで内側から爆発したように破裂させて死んでいた。パイロット槽内部は、パイロットの血によって真っ赤に染まり、それを映し出すモニターのカメラにも、飛び散った鮮血や内容物がべっとりと付着してゆっくりとその表面を流れ落ちていった。
(これが……オリジナルディヴァインの威力だというの……)
 思わず唇をかみ締める。自分にはどうすることもできなかった悔しさと無力感。旧SSGU技術陣の技術力の高さをまざまざと見せ付けられ、白河はその歯がゆさに今にでも目の前のモニターに拳を叩き込みたい衝動に駆られていた。
「……テストは中止。全員、後片付けを急いで。なお、今回のことは部外秘とします。外部には一切漏らさないように……」
 なんとか、それでも責任者としての責務をまっとうすべく声を絞り出す白河。重苦しい沈黙の流れていたオペレーションルームに、彼女の命令がうつろに響いた。
「……了解」
 しばしの沈黙の後、スタッフの誰かがそう応え、そして、動き出すと、オペレーションルームが重苦しいながらもゆっくりと動きを取り戻していく。
「……奈々ちゃん。八号機の様子は?」
「え、あ、はい。……異常はないです。精神パターンも沈黙してますし、システムも外部からの操作に応答するようになっています」
「……そう。じゃあ、メイン電源をカットしておいて。……テストは、しばらくの間ストップされるでしょうし……」
「……はい」
 力なく答え、八号機の電源を落とす奈々美。それを確認すると、白河はふーっと深いため息を吐いて、実験施設内のディヴァイン八号機をシールド越しに見上げた。まったくの沈黙を見せる八号機。人を殺したあとでも、この人型兵器は何事もなかったかのようにひっそりとたたずんでいた。
「……あなたは、誰を待っているというの……」
 白河が、そう独りごちこ、その時だった。
 ヴィーン! ヴィーン! ヴィーン!
 警報。先ほどのものとは、明らかに違うものだ。それを耳にした白河の表情が、途端に引き締められた。
「敵襲! こんなところまで敵がくるというの?」
 赤く回転する警告灯を睨んでつぶやいた白川に、天井に内蔵されたスピーカーから通信が入る。
『緊急事態発生! 敵機動兵器群が本施設に向かって侵攻中! 戦闘要員は直ちに戦闘配置についてください! 繰り返します……』
「どうやら、本当らしいわね……。まったく、せっかく奴等の目に付かないところに八号機を隠したというのに……!」
 いまいましげに吐き捨てて、オペレーションルームを走り出る白河。走り出した廊下では、すでに多数のSSGU隊員達が慌しく駆け回り、戦闘準備が行われていた……。






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