『全日本リーゼント選手権』 無人



「はあい・皆さんお元気ですか。こちらは東京ドームです。アメリカではアカデミー賞の発表があったばかりですが、日本にはこれがあります。今年もこの季節がやつてまいりました。年に一度日本一リーゼントのにあう男を決める大会、第二千七百六十五回全日本リーント選手権が今、開幕いたします!キリストが生まれる前から続くこの伝統ある大会、我々大日本帝国放送では今年も完全実況生中継いたします、解説は髪が薄くなってリーゼントどころか髷も結えなくなるのではと心配される力士の琴ライトニング関、実況はわたくし無人が担当させて頂きます。関取、よろしくお願いします」
「大きなお世語です。こちらこそよろしく」
「ありがとうございます。さて、さつそく司会の凡ちやんとTOTTOちやんが出てまいりました。このババア、すでにボケ老人のはずですが相変わらずなりは派手ですね、関取?」
「そうですね。あのかっこうをしながら『アフリカのかわいそうな子供たちに愛の手を』ですからね。とんでもないですね。小学校中退した時点でぼけ始めたんじゃですか」
「困ったもんですね。さあ、エントリーナンバー1番の登場です。まず最初に出てくるのは川崎金蝿のボーカル、超さんです」
「変わってませんね」
「本当に変わってませんね。最近、川崎金蝿は復活してCDを出したりライブ行なったりしているようですが。これについては関取、どう思われます?」
「そうですね、彼はまったく自分の立場を理解していないようですね」
「と言いますと?」
「彼は所詮ナメ猫と同じ立場なんですよ。過ぎ去った七十年代ツっパリ文化の化石にすざないんですよ。なのに何を勘違いしたのか・・・。彼は『ものまね紅白歌合戦』の審査員やってりゃいいんですよ。ヘッドホン片耳に当ててね」
「まったくその通りですね。さて、出場者のアピールタイムですが、おや、ステージの超、何か様子がおかしいですよ…顔が真っ青です。TOTTOちやんが心配そうにかけよりますが」
「目が本気じゃないですね.偽善者ぶりを全開にしてますね。あっ!」
「大変です!超がTOTTOちゃんをぶっとばしてしまいました!これは大変なことになりました!超、目が虚ろです!よだれも垂れ流してす!琴ラィトニング関、これはどういうことなんでしょう」
「恐れていたとおりになりましたね」
「というと?」
「ヤク中ですよ、彼」
「え。でもそれは濡れ衣だったんではないんですか?」
「逆ですよ。彼は濡れ衣を着せた方ですよ。あの顔でヤクのひとつもやってないわけがないじゃないですか。たぶん出番を待つている間に幻覚症状が出ちゃったんでしょう」
「そうだったんですか。あっ!超がノロノロと凡ちゃんの方へ近寄っていきます!凡ちゃん体がすくんで逃げられません!」
「ちがいます。凡ちやんまだ笑ってます」
「あ、本当だ。これはどういう・・・!汎ちゃん動いたあ!」
「見事に体重ののったストレートですね」
「これ驚きました、凡ちゃん、パンチ一発で超をのしてしまいまし。関取、これはいったいどういうことなんでしょう」
「実は凡ちやんはケンカが強いんですよ。芸能界裏ケンカ番付けではトップ5に入ると言われています」
「そうだったんですかあ。あ、いま超がTOTTOちゃんと共に警備員に引きずられていきます。大会は失格ですね。さすがにもう芸能界復帰は難しいでしょうねえ」
「しかたないですよ。後釜にはアラジンのボーカルが座るでしょう」
「関取、今の人にアラジンなんて言ってもわかりませんよ」
「おもしろいのになあ。『♪朝もはよからヘアーの乱れを・・・』」
「しばらく関取はほっときましょう。さあ、気を取り直して大会の再開です。エントリーナンバー二番は、懐かしいのあの人の登場です。柴田伊助さんです。ギターを抱え歌いながらの登場です。小刻みにステップを踏みながらステージ上を動き回っています。この曲は、『男の勲章』だあ!」
「『ツッパルことがおとこのー…』」
「関取もつられて歌っています。会場中に歌の輪が広がっていきます。これは二人目にして早くも優勝決定かあ?おや、観客席からステージに何人か上がっていきます。やけに顔色の悪い連中が座り込みを始めましたが琴ライトニング関、あれはいったいなんなのでしょう」
「ああ、あれね、あれは特撮オタクの抗議ですよ」
「?なんでそんなのがこの会場にいるんでしょうか」
「柴田君ね、少し前に特撮番組、戦隊モノに主演してたの、知ってますか」
「いえ、知りませんでしたが」
「彼ね、途中でガラッと髪型変えたんですよ。ただそれだけならオタクどももどうも思わないでしょうが、その理由ってのがひどかったんです」
「何なんですか」
「彼は戦隊モノの放送期間中に別の一般のドラマにも出ましてね、その役作りのために髪型を変えたと言うわけなんです」
「それはひどい」
「彼は主題歌も歌ってたんですよ。オタクにしてみれば大きな侮辱と裏切りですよね。『青春爆発ファイヤー…』」
「なるほど。どうやら今の関取の話と同様のことが観客席にも伝っていったようですね。ブーイングがだんだん大きくなってきました。どうやら彼もおしまいですね」
「彼もまさかオタクに足下をすくわれるとは思ってもみなかったでしょう」
「そうですね。ケリがついたところで、コマーシャルです」


「…凄いエンジン音です。次の選手は愛車のアメ車に乗っての登場です。どうです、解説の琴ライトニング関?」
「いかにも燃費が悪そうですね。これで地球の気温一度ぐらいあげたんじゃないですか。ただで暑苦しいツラなのに、勘弁してほしいですね」
「ぷぷっ。エントリーナンバー3番は、額が広いエンスーリーゼント・KAZUNOKOCHANです。はげた頭にちょこんとのったリーゼントがかわいすぎます!同じはげとしてここは頑張ってほしいところですね、琴ライトニング関」
「あんなのと一緒にしないでください」
「近親憎悪ですか?」
「やかましい!」
「あたっ、いてててて、関取にどつかれてしまいました。関取、あなたプロの相撲取りなんですから少しは手加減してくださいよ」
「おまえが悪い」
「はあ、すいませんでした。そうこうしている間にKAZUNOKOCHANはワックスのきいたアメ車の魅力で観客を虜にしています」
「アメ車とリーゼントで相乗効果を起こしてますね」
「早くも勝ち誇っています。愛車に身を預けて勝利の櫛入れかあ?」
「櫛入れるほどないじゃないですか、髪」
「放送席のはげの不機嫌さとは対照的に、あたっ、ご、ご満悦のKAZUNOKOCHANであり…あれ、なんだ」
「?…わははははっ、ヅラがずれやがった!あいつ、失礼、彼はカツラだった様ですね。しかもつるっぱげ」
「これは驚きました。髪に櫛を入れ続けたことでなんとKAZUNOKOCHAN、ヅラが外れてしまったようです。大会規定により本大会は自毛のリーゼントでの参加のみ認められると言うことになっていますので、…」
「失格ですね」
「そうです、早くも二人目の失格者と言うことになります。放送席では琴ライトニング関が高笑いです。あたっ」
「よけいなことを言うな。あは、いえいえ。それにしても最近テレビに出てないと思ったらこういうことだったんですね。テレビに出ればどんなに精巧なカツラでもたいがいばれてしまいますからねえ」
「KAZUNOKOCHAN、愛車と共に寂しく退場です」
「勝った」
「趣旨が違いますよ」
「いいの」
「さ、どうやら時間がおしてきたようですね。司会の凡ちゃんも進行をはやめています。次は4人目、元SャネルズのMーシー・・・うおっ!」
「壮観ですねえ」
「Mーシーがステージに出て来たとたんにドーム中から物が投げつけられています!これはすごい!どう思われます関取!」
「どうって…誰も彼の下らないギャグを聞きたくないんじゃないですか。みんなMーシー嫌いなんじゃないですか」
「それもそうですね。とっとと退場してもらいましょう」
「この際だから芸能界から退場してほしいですね。人生から退場してもらっても構わないと思いますよ」
「でもなんでSャネルズなんでしょう?改名後のラッツ&Sターでもいいじゃないですか」
「うーん、そうですねえ、たぶん…」
「たぶん?」
「たぶんSャネルズのほうが間抜けにきこえる名前だからでしょう」
「はあ?関取、またいいかげんなことを」
「いいかげんじゃないですよ。筆者が言ってますもん」
「じゃあ、登場者が芸能人ばかりなのも…」
「もちろん筆者の都合です。本当はベイスターズの三浦投手とか出したかったらしいですけどね、面倒くさくなったみたいです」
「・・・気づかないうちに次の選手が出てたみたいですね。静かすぎてわからなかったです・5番目は・・・元BφWYの松井ちゅねまちゅみたいですね」
「客席のBφWY信者が礼拝を始めてます」
「相変わらずすごい影響力ですね」
「別に彼自身の影響力じゃないでしよ。彼が歌い出すまでですよ。彼が歌えばいっぺんでさめますよ」
「そんなにひどいですか」
「昔のほてーの比じゃないです」
「それはひどすぎる」
「べ-スはいいんですけどねえ。彼にはステージ上の仁王吽像があってんですよ。シングルデビュー嫌がってたらしいですよ。はげサークルで友達になったBφWYのドラムのたかはし君に聞いたんですけど」
「だいたい何で彼なんです。彼リーゼントしてましたかね。どうせならほてーとかひむろ呼べばよかったのに。大会実行委は何考えてんでしょうか」
「いやあ、松井の方がキャラクター的におもしろいからって...」
「…筆者が言ったんですね」
「よくわかりましたね」
「もういいです」
「あ、始めましたよ」
「うわ・・・関取、これは想像以上に・・・どうやら私は彼の歌をなめていたようです、まさかこれほどとは。おや、客席のBφWY信者らしき人々が帰り始めましたね。ま、わかりますけど」
「私トイレ行ってきていいですか」
「あの、本番中なんですけど…。ま、いいや、CMにしましょう」


「さあ、エントリーナンバー6番、最後の選手となるのはこの人、矢沢A吉さんです!まさにトリを飾っての登場となります」
「キャロルで組んでたギターのジョニ倉もドームに来たみたいですけど、Vシネマが主戦場だからって門前払いにされたらしいですよ。ジョニ倉、泣きながらデコトラに乗って帰ったそうです。まあ爆走トラッカーじゃ仕方がないですよね」
「琴ライトニング関、Aちゃんについては何にも言わないですか」
「何のことでしょう」
「何って、あなた他の人だれかれ構わず散々こきおろしたじゃないですか。んもう、ずるいなあ。この卑怯もの!あなた相撲取りでしょうが!」
「相撲取りだって命は惜しいですよ。下手なこと言ったらどんな殺されかたするかわからないんですよ。何されるか、じゃあなくてどんな殺されかたされるか、ですよ!それに」
「それに?」
「矢沢信者は矢沢がすべてだから、つまんないんですよ。いくらつついてもダメージにならないんだから!ごく最近矢沢がアニメソングやった(実話)なんて言ってもなんともないんですよ。ヨソの場合だったらたいがいダメージ受けるのに!」
「逃げたな」
「なんとでも言え」
「まあいい、とにかく放送を続けましょう。東京ドームでは今までにないほど盛り上がっております。ものすごい熱気にむせ返るようです」
「あ、やべえ」
「どうしたんですか関取?観客席は矢沢信者と思しき人々が立ち…おわっス、ステージのほうに向かって押し寄せてきます。ほぼ全員じゃないかあっ!はっきり言って恐いです。恐すぎます。まるで津波です!彼らは一様に頭をガチガチのリーゼントにかためています。首には赤もしくは黒のタオルがかけられ・・・ちょっと琴ライトニング関、どこ行くんです」
「逃げるが勝ちっ」
「何言ってるんです、本番中なんですよ…て、うわあっ、来たあっ、こんなんじゃ初めからこんなことしなくてもよかったんじゃないかあっ!関取待ってえ、おいてかないでくれえっ、あ、そうだ、解説は逃げちゃった琴ライトニング関、実況は無人でお送りしました。それではみなさんさようなら。た、たすけてくれえっ!



※一応フィクションです






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