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1. 『ATOMIC HEART』 言わずと知れたMr.CHILDRENの1994年の作品。90年代に出たアルバムの中で、5本の指に入るくらいの売り上げと完成度を持つ作品であり、「ミスチル現象」という言葉を生み出すきっかけとなった作品でもある。この時点でのミスチルは、渋谷系音楽からの脱皮過程にあり、後の『深海』『BOLERO』で聞かせた内省的な音楽への過渡期にあったと言える。したがってこの『ATOMIC HEART』では、例えば「ラヴコネクション」や「雨のち晴れ」「Over」のような楽曲がある一方で、「ジェラシー」「Asia」「Round About」のような、後の作品の原型とも言えるような楽曲があるわけである。僕がこの作品を傑作に選んだ理由としても、楽曲の良さばかりでなく、あらゆる面に於いてミスチルらしさが表現できていた点が挙げられる。前三作よりは現実的になったが、後の二作品ほど深刻ではない。明と暗がうまく溶け合っている上に、一曲一曲の完成度も高い。その辺りが、90年代を代表する作品になった原因の、一端であるように思われる。 ところでミスチルは未だに活動休止中である。確か今年中にはアルバムを出すと言っていたが、この年刊が出る頃にはどうなっているだろうか。この二年間で聞いたのは、ベースの中川君とドラムのJen君が、マイラバの藤井君と一緒にシークレットライブを行ったという話と、桜井君が離婚後不倫相手と一緒に山形へ逃亡、それから東京に帰って豪邸を建てたという話だけである。このまま自然消滅するかも知れない、と思いつつ、改めて『ATOMIC HEART』を聞いている。良い作品は、いつ聞いてもやっぱり良い作品だと思った。一日も早い活動再開を望んでいる。 |
2. 『PUNCH THE MONKEY!』 もしかしたら、この作品がレコード大賞の企画賞にノミネートされるかも知れない、と思いながら聞いている。 この作品は、ピチカートファイブのコニタンこと小西康陽率いる「********* records,tokyo(レディメイド・レコード)」の面々が、ルパン三世30周年を記念して作られたリミックス集で、或いはルパン三世トリビュート・アルバムと言えるかも知れない。この作品に収められている11曲は、11人のDJが一局づつ提供する形で構成されているが、ルパン三世に対する独自の解釈を聞く側にも理解させる一方で、アルバム自体の完成度も高く、並ではない思い入れの深さを窺い知ることができる。或る曲では、原曲を大事にしながら、バックの演奏に手を加えて、骨太なサウンドに生まれ変わっている。また或る曲では、ルパンとは全く関係ないように思えて、突然ルパン三世のオープニングが流れ、意表をつかされる。また或る曲では、原型を留めないほどにリミックスされている。全く、何度聞いても興味は尽きる事がない。90年代ルパンのサウンドトラック、と表現されるのも、納得できる。 ただ僕がルパン三世を見たのは高校生の時、勿論再放送である。しかも夕方に放送されていたので、毎日見ていたわけではなかった。だから他の人ほどの思い入れはない。ただ、パート2の最終回だけは、よく記憶している。東京で偽のルパン一味が現れ、本物のルパン達と熾烈な争いを展開するというストーリーだったが、そこで表現された世界は、後の宮崎駿ワールドそのものだった。また物語の終わり方も、クールで格好良かった。アニメ=子供向けの既成概念を打ち破るには、充分すぎる材料の揃った作品であったことは、最終回を見ただけでも実感できた。 最後にもう一つ、このアルバムを聞いて強く思うのは、やっぱりルパン三世は山田康雄がはまり役だったのだという事である。別に栗田貫一が悪いと言う訳ではないが、どこか物足りない事は否定できない。サザエさんの中で、カツオ君、ノリスケさんと次々に声優が変わって、急にぎこちないものになったように、今のルパン三世も、どこかぎこちない雰囲気を醸し出している。人気シリーズだけに今度も続くのだろうが、おそらく山田康雄以上にはまり役の声優さんは出て来ないだろう。 |
3. 『23am』 この作品については、おそらく知らない人の方が多いのではないだろうか。輸入盤は去年の11月頃、国内盤は今年の1月に出ていたもので、ロバート・マイルズの二枚目のアルバムである。ロバート・マイルズは、現在はDJとして活躍しているが、その前はクラシックのピアニストだったいう変わり種である。出身はイタリアだが、以前音楽好きの知り合いに、ローバート・マイルズの話を持ち出した時、イタリア人と聞いて「本当の名前はロベルト・ミルズとか言うじゃないの」と言っていた。真偽の程は分からないが、どちらにしても、イタリア人で世界的に活躍しているミュージシャンはそんなに多くはは居ないはずだから、貴重な存在である。 この作品は、一応はテクノという範疇に属しているが、最近のテクノは、もはやテクノという枠ではおさまりきらない程の広がりを見せていて、この作品に関しても、テクノなのテクノでないか、はっきり定義する事ができない。一応テクノの作品ということで話を進める事にすると、ロバート・マイルズのテクノは、例えばケミカルブラザーズやプロディジー、ロニ・サイズ、ゴールディーのような、今のところテクノ代表人物と言われるような人々の作る音楽とは全く異なっている。ケミカルブラザーズやプロディジーはロック寄り、ロニ・サイズやゴールディーはドラムベースという確固たるスタイルを持ち、かつジャズに近い要素を持っているのに対して、ロバート・マイルズの音楽はテクノとクラシックの融合体と言うことができる。勿論ロバート・マイルズ自身がクラシック出身だからこそ、こういう音楽が生まれて来たのだろうが、アルバム全体の完成度という点では、この作品は群を抜いている。見事という他ない。一曲一曲の印象は意外に地味だが、全体を通して聞いたとき、初めてこの作品の奥深さが分かって来る。まるで交響曲のような一枚である。 ちなみにロバート・マイルズのファースト・アルバム『Dreamland』と聞き比べてみると、その対比が浮き彫りになって、非常に興味深い。『Dreamland』では、「CHILDREN」のヒットに代表されるように、一曲一曲の完成度が非常に高い。また、『Dreamland』は空をイメージさせるような音楽があるのに対し、『23am』は海底のイメージがある。本人はそのことを意図して作ったのか、まだ分からない部分が多いだけに、興味は決して尽きる事がない。 |
4. 『THE POLICE LIVE!!』 ポリス、と聞いて、ああ、スティングのバンドか、と連想する人は多い。そんな人に聞いて欲しい一枚である。発売は1995年と新しいが、1979年のボストン公演と、1983年「シンクロニシティー」ツアーでのアトランタ公演が収録されている二枚組みで、新旧ポリスの両方が堪能できる。特に聞いてもらいたいのが、ボストン公演の方で、初っぱなから「NEXT TO YOU」「SO LONELY」「TRUTH HITS EVERYBODY」と、もの凄い勢いで観客の意気を高揚させる辺りは、まさに初期のポリスの真骨頂と言える。舞台狭しと飛び回るスティングの姿が、簡単に想像できる。 しかし、決してポリスはスティングだけのバンドではなかった。ボストン公演の方を聞けば分かると思うが、ギタリストのアンディ・サマーズも確固とした形を持っていたし、スチュアート・コープランドのドラムは、世界中のミュージシャンに多大な影響をもたらした。LUNA SEAの真矢もスチュアート・コープランドの影響を受けた一人である。素人の僕が聞いても、この人のドラムは神懸かり的なものがある。ワールドカップで言われた通りに言うなら、やはり身体能力の高さによるものなのだろう。 ところで、僕の周辺でポリスを毛嫌いする人はかなり多い。理由を聞いてみると、大体の人が、スティングの楽曲が良くも悪くも哲学的である事を挙げる。それから、パンクバンドにしては上手すぎる事も言われる。そんなものだろうか。僕はその二点でポリスを気に入ったので、他の人達の言う事はあまり理解できない。しかしこのライブを聞いていると、例えば「ROXANNE」や「CAN'T STAND LOSING YOU」のような、スティング初期の名曲であっても、見事にパンクへと変貌している。しかも鳥肌が立つくらいの疾走感がある。これほどの疾走感を、たった三人で演っているのだから凄い。スリーピースのバンドと言えば、日本ではプランキージェットシティーが居て、海外にはグリーンデイなどが居るが、疾走感はあっても音そのものは軽い。ポリスはまず重厚な楽曲があって、それに疾走感がついて来る。多少荒削りであっても、個人の演奏技術が高いために、完成された音のように聞こえてしまう。ポリスは決してスティングの楽曲に頼るだけのバンドではない。れっきとしたライブバンドで、ライブによって人気を獲得し、そして未だに伝説として語られるのも、ライブあってこそのものである。だからこのライブアルバムは、ポリスが嫌いと言う人に聞いてもらいたい。これを聞いて、それでも嫌いだと言うのだったら、こちらも納得できる。 さて、一応アトランタ公演の方にも触れておくが、この時点では、最早ポリスであってポリスではない。スティングと彼のバンド、というイメージが強い。「ROXANNE」や「CAN'T STAND LOSING YOU」も、初期ほどの勢いは感じられない。確かに「見つめていたい」は名曲だけれど、これもポリスの楽曲と言うよりスティングの楽曲である。ポリスはこの時のツアーの後、一度ライブに出たきり、現在まで活動を休止したままである。解散宣言はしていないが、再結成はあり得ないと言っている。ただ最近になって、再結成の動きがちらほらと聞かれるようになった。しかし、おそらく再結成したとしても、僕が望むようなポリスは決して見られないだろう。したがってポリス再結成には絶対反対を唱えている。ポリスには永久に伝説のバンドであり続けて欲しいからこその願いである。 |
5. 『Dobermann』 今年はフランス映画が当たっている。「ドーベルマン」「アサシンズ」「TAXI」と、僕の興味をくすぐるような作品が立て続けに上映されたが、いずれも行く余裕がなくて、結局今まで見られずじまいである。とりあえず早くビデオレンタルが始まる事を期待しているが、それまでサントラで我慢することにする。 『Dobermann』はフランスのタランティーノと称されたヤン・クーネン監督の「ドーベルマン」のサウンドトラックである。サントラでありながらここに傑作として挙げるのは、ただ単に映画の影響ばかりでなく、一つの作品として聞いてみても、完成度の高いアルバムだからである。多少時代遅れのテクノ、と言えなくもないけれども、映画から音楽から、終いにはサッカーのナショナルチームにまで芸術性を取り入れる国で、テクノを演らせると、こんな感じになってしまうのだろう。この映画で主演していた人(名前をど忘れしてしまった)は、某自動車のCMに出演中である(9月現在)。ワールドカップの終了とともに、フランスへの関心も失われつつあるが、日本人にとって、確実にフランスは近い存在になっていると思う。フランスの音楽は、まだまだ発展途上だが、フランス映画の完成度は、既にリュック・ベッソン監督の「グランブルー」「ニキータ」「レオン」などで証明済みである。フランス映画には、ハリウッドのような壮大さやエンターテイメント性はないものの、特有の奥深さがあり、映像美がある。もっとフランス映画に親しんでもらいたい。何だか映画紹介のコーナーになってしまった。 |
6. 『BEN FOLDS FIVE』 個人的な思い入れが最も深い作品である。 ベンフォールズファイブは「ロングバケーション」でも取り上げられていた事でも有名だが、それより以前から、既に外資系のCD店(タワーレコードやHMVなど)で相当の盛り上がりを見せていた。口コミだけで評判が高まって行ったアルバムは今時珍しい。CD店の人達は、そのアルバムを手に取り、視聴して、迷わずカウンターに持ってくる姿を見ながら、ほくそ笑んでいたという話である。 この作品については、僕は高校三年の時に非常にお世話になった。大学受験を目前に控えた苦しい状況の中で、せめてもの慰めとなった。結果的には僕は受験戦争に敗北した形で今の大学に居るのだが、それでもこの作品には感謝している。これが無かったら、もっと悪い方向へ転んで行ったかも知れないとさえ思っている。内容については、最早言うまでもない。まだ聞いていない人が居るなら、今すぐ聞くべきだ。 ベンフォールズファイブは、去年の二月には『Whatever and ever amen』という作品を発表している。こちらの方は、どちらかと言えばジャズ寄りで、最初のアルバムに見られたパンクっぽさ、荒削りさは感じられないが、一曲一曲大事に育て上げたというイメージがある。こちらもお薦めの作品だが、やっぱり最初のアルバムの方が魅力的である。ちなみに最近のベンフォールズファイブは、アメリカ版「ゴジラ」のサントラに「AIR」という楽曲を提供している。また『Whatever and ever amen』も、アメリカ各地でロングヒットを記録し、そろそろ本国でもブレイクの予感がある。個人的には、別に売れなくてもいいから、とにかく今のままで、良い音楽を維持して欲しいと思うのと、もっと多くの人に聞いてもらいたいの思うのが半分ずつ、なかなか複雑な心境である。 |